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なぜか“たわし”に異常な愛着を持っている。
といっても、別に“たわし”で○○を○○しようとか、そういう類のことではない。
“たわし”という音の響きにやたら熱いモノを感じるのだ。
そのきっかけは今井美樹の「プライド」にあった。
サラリーマン1年目のことである。
おれはとにかく出来の悪い新人だった。当時の上司にもやたら叱られた。
おれはこの上司(店長)がとても苦手だった。怖かった。
ただ、周りは「店長とHIRO-Mは同じタイプ。似てる」と口々に言っていた。
きっとそうなのだろう。似ているんだろう。
要するに、おれはおれと合わないんだ。まぁ、そんなことはどうでも良い。
業務の方も過酷で…。
深夜0時を過ぎてミーティング…などザラだった。
眠気で朦朧としている中で、よく叱られた。
そんな時に有線でよく流れていた曲は、今でも当時のどんよりとした感じを痛快なまでに呼び起こしてくれる。
「ALICE」/My Littele Lover
「La La La Love Song」/久保田利伸
「チェリー」/スピッツ
「Real Thing Shakes」/B’z
…とか。あーやだ。
その中に、今井美樹の「プライド」もあった。
ゆっくりとした落ち着いたイントロの後、「わたしはいま~…」と始まるこの曲。
その後の歌詞が出てくるまでに2秒近く空く。
聴いている者の頭の中には、「わたしはいま」というたった6文字によって
何の色付けもされていなければ何の意味もない、ピュアな世界が作り出される。
心地よい瞬間である。
しかし、だ。
件の苦手な上司(店長)が…
あろうことかこの貴重極まりない6文字を持って行きやがったのだ。
る~る~る~る~る る~る~る~る~♪ (有線から流れるイントロ)
…
「たわしはいま~♪」
…まさに言葉のヒットエンドランだ。
肉体的にも精神的にも疲れ果て、朦朧としている中で
このシュールでまったくもって意味不明なワンフレーズを
しかも、恐れている上司の口から聞かされたおれの気持ちなど誰も分かるまい。
後にこの記憶を呼び起こすことになるのが、BoAの「Valenti」であった。
「確実に“わたし”の~」
「タイトなジーンズにねじ込む “わたし”という戦うBody~」
もう、何の気なしに歌えば確実に「わたし」は「たわし」になってしまうのだ。
あの忌まわしい深夜の記憶が…
なぜかどういうわけかおれの脳内で料理され…
大好きになっていたのだ。
「たわし」が。
そういう意味でも、東京フレンドパークのこのセンスは大好きだった。